榊原 杏奈

食の楽しさを伝え、地域に運び続ける
泉 周作
株式会社泉平
代表取締役社長
大学卒業後、外資系企業や、株式会社ファーストリテーリングの社内ベンチャー立上げなどを経験し、大手企業でのキャリアを積んだ泉社長は、父の誘いで老舗食品流通会社・泉平に入社。サラリーマンとして一歩を踏み出しつつも、会社の改善に自ら乗り出し、物流改革や組織体制の刷新に挑んできた。「食で 人をつなぎ、日本で一番ありがとうと言われる会社に」というビジョンを掲げ、社員と共に地域に根ざした事業を育て続けている。伝統に甘んじることなく、誇りある流通業の未来を見据え、挑戦と進化を止めない経営者である。
経歴
1977年生まれ、兵庫県出身。ボストン大学経営学部を卒業後、外資系企業のGEコンシューマーファイナンス(現:新生フィナンシャル株式会社)や株式会社ファーストリテーリング食品事業部での勤務。さらに株式会社ミスミ(現:株式会社ミスミグループ本社)の 食品事業部へ入社し、株式会社ミクリードへの事業分社化に貢献。泉平入社後は拠点の統合推進や生産性向上に尽力し、経営基盤の安定化を図った。
挫折がくれた視点、現場が導いた決意
私は学生時代、アイスホッケーという過酷なスポーツに全力で打ち込みました。夢を抱いて進んだ道でしたが、大学の推薦枠から外れたことで、大きな挫折を経験します。
しかし、その挫折が、私にとって初めて自分自身を見つめ直すきっかけとなりました。
その後は、日本のさまざまな精鋭企業で経験を積むことになります。大企業の組織構造、プロフェッショナルな現場、徹底された品質管理――その一つひとつが、私の中に「経営とは何か」という視点を根付かせていったのです。
そんな折、父から「泉平に来ないか」と声をかけられました。創業百年を超える老舗企業という重みを感じながらも、最初は一社員としてのスタートでした。
しかし、社内の仕組みや働き方に課題を感じた私は、現場の声に耳を傾けながら、自ら改革に乗り出すことを決意します。
目の前の一人ひとりの社員に支えられながら、彼らの働き方に丁寧に向き合い、泉平の未来を描くための第一歩が、そこから始まりました。

「ありがとう」を運ぶ企業へ――物流改革と食育の挑戦
学校給食や福祉施設、病院を中心に食品流通を手がける企業として、西日本エリアに拠点を構え、トラック92台を自社で保有しています。調達から運搬まで一貫して担い、地元の旬を活かした献立提案や、兵庫県産素材を使った冷凍コロッケやゼリーなど、商品開発にも注力しています。
「食で人をつなぎ、日本で一番ありがとうと言われる会社になる」というビジョンを掲げ、「泉平の食育」という独自のミッションを実践中です。これは、①食を安定的に届け続けること、②その魅力を地域に伝えること。
この2つの軸を社員一人ひとりが理解し、日々の業務に落とし込むことに力を注いでいます。
経営に携わってから最も大きな転機となったのは、拠点統合を伴う物流プロジェクトでした。
三つの拠点を一つに集約し、新しい物流センターを建て、システムも刷新するという大規模な改革。
夜通しの作業が連続し、半年以上赤字が続く中、「本当に大丈夫だろうか」と不安がよぎったこともありました。
それでも全拠点から応援体制を敷き、社員と共に乗り越えたあの経験は、「今までと違うことを本気でやりきれば、必ず道は開ける」という確信に変わりました。

140年企業の次なる挑戦
人口減少が進むこれからの時代、私たちが向き合うのは「胃袋の数が減っていく」現実です。それでも、地域の人々の暮らしを支える食品流通の役割は、ますます重要になっていくと考えています。
そのなかで、私たちが今検討しているのは、食品流通というサプライチェーンにおいて、さらに川上に進むのか、それとも川下に広げていくのかという視点です。
どちらにしても大切なのは、効率化と進化です。人手不足という避けられない課題を前に、AIの力を借りながら業務全体の質を高めていく必要があると考えています。
営業提案、社内マニュアルの整備、新規事業の種探しまで。すでにAIが担える領域は拡大しており、10年後を見据えて、業務の効率化とトップラインの成長の両立を目指しています。
140周年を迎えるその日に向けて、今の1.5倍の企業規模に挑戦するという目標を掲げました。でも、数字だけを追うのではなく、社員がもっと誇りを持ち、楽しく働ける組織にしたい。KPIに追われすぎていた反省を活かし、次の10年は「やりがい」と「成果」のバランスを大切にしていきます。
食品流通という社会インフラを担う責任と、働く仲間一人ひとりの幸せ。その両方を大切にしながら、これからも、地域に根ざし、人に寄り添う会社を目指して歩んでいきます。

学生であるあなたへ
何かに挑戦するとき、不安や迷いはつきものです。でも、実際に一歩を踏み出してみると、「意外と簡単だった」と思えることも少なくありません。
やらずに後悔するよりも、やってみること。その一歩が、自分の世界を大きく広げてくれます。
若いうちは失敗を恐れず、興味があることにはとりあえず手を伸ばしてみてください。
完璧である必要はありません。まずは動いてみること。そこからしか見えない景色が、きっとあります。
「カバン持ち」で得られる体験
私の「カバン持ち」として参加してくれる学生には、こんな体験をしてもらいたいと考えています。
・社内の重要プロジェクトのミーティングに参加
・ビジネスミーティングに社長と参加
・食品メーカー70社あまりが参加する自社開催の展示会の舞台裏に潜入
・様々な分野の経営者との会食に参加
など
ぜひ経営の最前線をご覧いただければと思います!
会社概要
会社名
所在地
代表者
事業内容
株式会社泉平
兵庫県姫路市白浜町甲841-47
代表取締役社長 泉 周作
・学校給食
・産業給食
・病院給食向け食品卸売事業
設立
1896年
従業員数
Web
335名
株式会社泉平は、学校給食・福祉施設・病院などを中心とした食品流通を担う企業です。
兵庫県を拠点に、西日本一帯に展開し、自社で92台のトラックを保有。調達・仕分け・運搬を一貫して行い、地域の旬の素材を活かした献立提案や商品開発にも力を注いでいます。
ビジョンは「食で人をつなぎ、日本で一番ありがとうと言われる会社になる」。
ミッションには「泉平の食育」を掲げ、食を安定して届け続ける責任と、食の魅力を伝える教育的な使命を果たしています。
物流改革やM&Aにも積極的に取り組み、地域と人に根ざした流通インフラ業として、130年を超える歴史の中で進化を続けています。