榊原 杏奈

「一番じゃないと意味がない」—異端の挑戦者、ロボットで世界とつながる。
クリストファーズ クリスフランシス
iPresence株式会社
代表取締役社長
サッカー全国優勝、建築設計業界のトップ経験、そして営 業日本一へ。
常に“ナンバーワン”を追い続けてきたクリストファーズ クリスフランシス社長が見据えるのは、コミュニケーションの未来。
遠隔コミュニケーション×最新テクノロジーで、誰も挑んでいないニッチな世界におけるロボットと人の共生を実現しようとしている。
経歴
神戸市出身、14歳の時に家族で渡英。
イギリスの大学を卒業後、建築設計事務所、大手人材紹介会社での勤務を経て、グローバル企業全国の営業の責任者として電話・ウェブ・テレビ会議システムの事業に従事。
アメリカからリモートでイベントにロボット参加するIT経営者を目にし、ロボットとコミュニケーションツールの新たな組み合わせに可能性を感じ、現会社立ち上げ。
原点は、常に“ナンバーワン”を目指す気持ちから

幼い頃から私には「どうせやるなら一番を目指したい」という気持ちが根付いていました。学生時代に取り組んだサッカーでは、英国での高校サッカー全国大会での優勝を経験しました。
人より努力し、誰よりも練習をする。走り込む。その積み重ねが、勝利という結果につながることを体感した原体験です。
イギリスの大学では、日本とイギリスの学生たちとともにジャパンソサエティを立ち上げ、100人規模の組織を運営。自ら様々なイベントなどを企画・運営し、多様な価値観の中で人をつなぐ喜びを知りました。
そして在学中に出会った当時まだリリースされたばかりのSkypeが、インターネットを通じたコミュニケーションの可能性を私に教えてくれたのです。
卒業後の建築分野での仕事では、日本一とも称される大手設計事務所で設計業務に就き、大規模なプロジェクトに関わるも右も左もわからない中で厳しい環境での毎日でしたが、そこで得た経験が自分を大きく成長させてくれました。
やがて「経営を学びたい」と思い営業職へと転身。人材業界で飛び込み営業を重ね、泥臭い努力の中からマネジメントの素養を磨いていきました。
その後、当時電話会議システムで世界最大手だったインターコール社に参画し、一人体制から大阪拠点を立ち上げる。行政や海外との連携を通じて、全国へとビジネスを展開する過程で、自分自身の強みと「広げていく力」に確信を持ち始めました。
そして、ある日出会ったのが、TEDxSannomiya(TEDxKobeの前身)の会場で遠隔操作ロボット「Double」を使って参加する人物でした。そこに私が心から「これでチャレンジしてみたい」と思えるものがあったのです。通信の知見、営業での経験、そして建築で培った構想力──これらすべてが「遠隔コミュニケーション×ロボティクス」というフィールドに結びついていきました。
誰もやっていない分野なら、自然とナンバーワンになれる。そう確信できた瞬間、私は33歳の春に起業を決意しました。
つながりの未来を、ロボティクスの力で創る
iPresenceでは、テレプレゼンスロボットという遠隔操作型の通信ロボットを軸に、教育や医療、福祉、ビジネスといった多様な領域へ「もう一人の自分」を送り出す仕組みを提供しています。
もともとは、アメリカで普及が始まっていたロボット活用をいち早くキャッチし、2014年、日本での展開を決意しました。当時はまだZoomも普及しておらず、テレワークや遠隔授業などは“未来の話”として扱われていました。それでも、震災を機にWeb会議の重要性が高まり、ロボットと組み合わせた遠隔コミュニケーションは、次の社会インフラになると確信していました。


創業当初の売上はわずか800万円。利益もほとんど出ませんでしたが、「この領域は誰もやっていない。だからこそ自分がやる意味がある」と信じて、仲間を一人ひとり集めてきました。アイデアを磨き、興味を持ってくれた人と試作を重ねる日々。
ZoomやSlackが浸透する前夜の時代から、私たちは一貫して“人が物理的に移動しなくても、熱量ある対話を届ける”ことを目指してきました。
今、日本でもテレプレゼンスの需要は高まりつつありますが、この領域はいまだニッチで、だからこそ面白い。
重要なのは、どのロボットを使うかではなく、「遠隔でつながる」ことの本質的な意味を社会に届けられるかどうか。iPresenceが挑んでいるのは、単なるロボット販売ではなく、“孤立しない未来”をかたちにすることです。今後も、技術とアイデアの力で、世界中の「行けない」「会えない」を、「行ける」「会える」へと変えていきます。
遠隔コミュニケーション×最新テクノロジーで創る“出会い”の可能性

私たちは今、「遠隔で会う」という体験を、より自然で、より心が通い合うものへと進化させようとしています。これまでテレプレゼンスロボットの輸入・販売から始まった私たちのビジネスは、現在、自社開発によるアプリケーションやロボットの開発、そしてグローバル展開へとフェーズを移しつつあります。
たとえば、スマートフォンを搭載することで“動く電話”として機能するロボット「Telepii(テレピー)」は、離れて暮らす家族同士のあたたかな対話を支えるプロダクトとして生まれました。ただ見守るのではなく、存在感のある会話を通じて互いに「つながる」ことの尊さ。それを体現するツールとして、コミュニケーションロボットの可能性を私たちは信じています。
今後はさらに、遠隔で握手やハグができるヒューマノイド型ロボットの開発にも挑戦します。大阪工業大学との共同研究により、2025年の大阪・関西万博での発表を目指しています。ロボティクスの力で、地理的な距離だけでなく“心の距離”までも乗り越えていく。それが、私たちの描く未来です。
また、メタバースやデジタルツイン、生成AIといった最先端の技術領域にも歩を進めながら、国内外のソフトウェア市場への展開を加速している現在においては、「遠隔コミュニケーション×最新テクノロジー」という次元への進化を遂げています。
日本発の技術で世界をリードすること。そして、日本の「ものづくり」への誇りと精神を、次世代のロボット開発という形でつなげていくことも、大きな使命です。
iPresenceは、神戸という地域から挑戦を始めた小さなベンチャーです。けれども私たちは、世界のどこかで誰かが「もう会えない」と諦めてしまうその瞬間を、技術の力で希望に変えていきたいのです。
未来は、まだ見ぬ“出会い”の可能性に満ちています。私たちは、そこに存在するすべての声を届けていきます。

学生であるあなたへ
「とにかく、やってみること」。これが、私が学生に最も伝えたいメッセージです。大学時代は、人生の中でも最も自由で、失敗が許される貴重な時間。だからこそ、頭で考えるより先に一歩踏み出すことが何よりも大切だと語ります。
チャレンジは決して大それたことでなくてもいい。たとえば、仲間を誘って飲み会を企画してみることでも、自分の発想を形にする第一歩になります。小さな挑戦の積み重ねが、やがて「自分で未来を創る力」へとつながっていく。学生の今だからこそ、自分の好奇心に素直になり、動いてみることが何より価値のある経験だと力強くエールを送っています
「カバン持ち」で得られる体験
私の「カバン持ち」として参加してくれる学生には、こんな体験をしてもらいたいと考えています。
・テレプレゼンスロボットを活用した実証現場への同行
・関西万博出展現場への同行
・国内外の企業・自治体との会議に参加
・プロダクト開発に関する内部ディスカッションの同席
・社長との1on1対話・意思決定プロセスの間近での観察
・「日本から世界へ」挑むスタートアップの熱量を体感
経営のリアルの現場にぜひご同行いただいて、いろいろ吸収していただければと思います!
会社概要
会社名
所在地
代表者
事業内容
設立
従業員数
Web
iPresence株式会社
兵庫県神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート
代表取締役社長 クリストファーズ クリスフランシス
遠隔地に設置しているロボットアバターを活用してその場の人とリアルタイムにコミュニケーションが取れる「テレプレゼンスアバターロボット(テレロボ)」の製作・販売等
2014年5月
17名
iPresence株式会社は、「遠隔でも“その場にいる”ような体験」を提供するテレプレゼンスアバターロボットの専門企業です。
教育、医療、福祉、オフィス、イベントなど、物理的な制約を超えた新しいコミュニケーションの形を実現するため、世界中のロボットを輸入・販売すると同時に、アプリケーションの開発や自社ロボットの製造も行っています。
2014年の創業以来、「人と人のつながりに、技術で橋を架ける」ことをミッションに掲げ、神戸を拠点に国内外で展開。関西万博に向けたヒューマノイドロボットの共同開発など、次世代テクノロジーとの融合によって、日本のものづくりと人間らしいコミュニケーションの未来を切り拓いています。